校長挨拶

五十嵐校長

旭川工業高等専門学校とは

 近年は、自然災害が頻発あるいは巨大化することによって、社会インフラが甚大な損害を受けることが多くなってきています。国外では紛争も多発し、悲惨な人的被害、修復可能かどうかを危惧されるくらいの環境破壊が進行しています。それがさらなる食料危機やエネルギー危機を誘起しています。加えて、地球規模の気候変動にともなう広域の環境影響も深刻になってきており、これらの複雑な課題を解決することが次世代に求められています。

 日本には、エネルギー・鉱物資源が賦存しないため、いっそうの発展のためには、科学技術に頼らざるを得ません。すなわち、日本においては、高い科学技術力を駆使して、国内外で直面する課題に対峙しなければなりません。この科学技術力を高め、継続させていくためには、それを担う人財が必須となります。旭川高専は、強力な教職員スタッフのバックアップの下、まさにこのような人財を育成する教育・研究機関です。

 旭川高専の教員は、工学の基礎となる知識だけでなく、最新の科学技術の動向を注視し、それを学生教育に還元する努力を惜しまない姿勢で臨んでいます。過去5年間、51の国立高専の中で拠点校として活動してきたAI・数理データサイエンス分野、ラピダスの道内進出にともなう、道内4高専の拠点校として活動中の半導体分野を中核とした最新の科学技術もすでに授業に取り込んでいます。

 本科では、高度エンジニアリングに必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身に付けるため、一般教育と専門教育とをバランスよく配置した5年間一貫のカリキュラムを構築しています。大学教育とは異なり、実験・実習・演習に重点を置き、修得した知識を実践できるよう配慮しています。専門分野として本科は、機械システム工学科、電気情報工学科、システム制御情報工学科、物質化学工学科の4学科から構成されています。学生の皆さんは、それぞれの分野で国際的にも通用する実践的な科学技術力を身に付けることができます。

 本科修了後の課程として、生産システム工学専攻、応用化学専攻からなる2年間の専攻科が設置されています。専攻科は、本科5年間の教育を基礎にして工学の知識・技術をより深く修得した高度エンジニアを育成することを教育目標にしており、要件を満たし専攻科を修了すると、大学卒業と同等の学士の学位を得ることができます。学生の皆さんは本科に増して、高度エンジニアとして活躍できる科学技術力を身に付けることができます。

 さらに、地元の課題を積極的に解決するためのPBL授業も全学科で開始しています。また、校内に起業家工房を整備し、自ら開発が必要と判断された課題に対して、いつでも取組むことができるようにもしています。

 旭川高専は、このような教育を通して、斬新なアイディアを発信し、意義ある価値を創造し、社会的・科学的・技術的な変革をもたらそうとする気概を有した人財を育成していきたいと考えています。そのためには、地域連携、国際連携は不可避です。グローバル化を目指した国際交流の展開、留学生の受入れ、教育・研究を通した地域社会との連携、産学官による地場産業の活性化など、地元に根差した国際的な高専へと変革していきたいと考えています。写真は高専制度創設60周年記念として、令和5年に植樹しましたライラックです。植樹1年目ですが、少しの花が咲きました。これからの60年でいっそうの花を咲かせるべく、教職員が一丸となって教育・研究、地域課題に取組んでまいりますので、皆様のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

校長 五十嵐 敏文

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